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■岩井國臣氏宛の警告書 27 Jul. 2007


東京都千代田区永田町2−1−1
参議院議員会館222号室
参議院議員 岩井 國臣 殿

2007年7月19日
骨董通り法律事務所
寮美千子代理人
弁護士・ニューヨーク州弁護士
福井 健策  

警 告 書

拝啓

 当職は、寮美千子氏(以下「依頼者」といいます)の代理人として、貴職に対して、下記の通り通知いたします。

 依頼者は、社団法人日本文藝家協会会員であり、1986年度毎日童話新人賞、2005年度泉鏡花文学賞を受賞した第一線の作家です。同氏は、1995年3月にパロル舎より編・訳 寮美千子 画 篠崎正喜として「父は空 母は大地 インディアンからの手紙」と題する絵本(以下「原書籍」といいます)を刊行しましたが、同書籍は、以後頻繁に重版され、現在は第8刷に及ぶ人気作です。

 しかるに、貴職が2004年7月に新公論社より出版された「劇場国家にっぽん わが国の姿のあるべきようは」(以下「貴書籍」といいます)の第30頁から31頁までの2頁は、その全文が、別紙に明らかのごとく原書籍の無断転載です。すなわち、当該箇所の1行目は原書籍3頁、同2ないし4行は原書籍6頁、同5ないし7行は原書籍34頁、同8ないし13行は原書籍8及び10頁、同14ないし21行は原書籍14頁、貴書籍22ないし31行は原書籍36及び38頁と、原書籍14頁に記載された「はただの水」なる語の脱落を除けば、単にひらがな表記を一部漢字に入れ替えたのみの完全な同一文であることが認められます。

 この点、原書籍は1854年にアメリカ先住民の首長がおこなったとされる演説で1931年に米国雑誌に収録されたオリジナルテキストに基づいておりますが、内容は依頼者が再構成したものであり、かつ、翻訳は依頼者が独自におこなったオリジナル翻訳です。よって、依頼者は原書籍の日本語文に対して、翻訳者及び翻案者として著作権を有しています(著作権法第2条第1項第11号)。

 貴職は、依頼者の了承を一切得ることなく無断で、原書籍の文章順を一部入れ替え、表記を漢字に変更した文章を、出典の明示すらせずに転載して貴書籍を出版し、貴職のウェブサイト(http://www.kuniomi.gr.jp/togen/iwai/titisora.html)に掲載したり、講演で利用したものです(http://www.jiti.co.jp/graph/toku/0504iwai/0504iwai.htm)。ウェブサイト掲載文には、原書籍のタイトルと同一の「父は空、母は大地」というタイトルまでが付されております。

 上記は、著作権のうちの複製権(著作権法第21条)、送信可能化権(同第23条第1項)、口述権(同第24条)、譲渡権(同第26条の2第1項)、並びに著作者人格権のうちの氏名表示権(同第19条第1項)、同一性保持権(同第20条第1項)の明瞭かつ悪質な侵害です。しかも、貴書籍は、依頼者とは開発工事や憲法をめぐる世界観をまったく異にしており、依頼者は、とうてい賛同できない貴書籍の主張を補完するために無断で自らの著作物が利用されたことに、強い憤りを覚えています。かつ、原書籍のファンが貴書籍を目にした場合、依頼者の了承を得て原書籍を転載したものと考え、あたかも依頼者が貴書籍の思想に賛同したかのように誤解するおそれは十分にあります。

 かかる著作権及び著作者人格権侵害は、民事上の差止(著作権法第112条)、損害賠償請求(同第114条ほか)、謝罪広告などの名誉回復措置請求(同第115条)の対象になるばかりでなく、故意であれば最高で懲役10年若しくは1000万円以下の罰金刑(同第119条第1号ほか)に相当する重大な犯罪行為です。

 しかるに、依頼者の抗議文に対して、貴職は去る6月30日、「父は空 母は大地を見たことがありません。当該部分は知り合いから教えてもらったものです」という、わずか5行の誠意の片鱗さえ見えない返答をおこなったのみで、以後今日まで約3週間にわたってウェブサイトから当該文を削除すらせずに、侵害行為を続けております。かかる「知り合いから教えてもらった」なる説明には、何らの根拠も付されておらずまったく信憑性がない上に、そもそも仮に事実であるとしても、当該文章を直接的に誰から提供されたかは、貴職の著作権侵害の事実を否定する法的な理由にはなり得ません。そうであるにもかかわらず、十分な事実調査や対応すら検討せずに、抗議を受けた後にもウェブサイトに当該文章を掲載し続ける行為は、明らかに故意で著作権及び著作者人格権侵害行為を継続するものであり、貴職の社会的地位を考えればその責任は極めて重大というほかありません。

 この点、万が一、貴職の不誠実な対応の裏に著作権侵害ごときと本件を軽く考える意識があるのであれば、著作物の盗用が近時いかに厳しい社会的指弾を受けて来たか、ご参考までに過去1年分の新聞記事を調べてみられることをお勧めします。

 上記を踏まえて、本書をもって再度、以下の4点の対処を要求いたします。

(1)寮美千子の著作物『父は空 母は大地』を著作権者の意に反して無断使用した旨の告知と謝罪を、貴書籍に追加すること。
(2)(1)と同様の告知と謝罪を、貴職のウェブサイトのトップページおよび『父は空 母は大地』を使用した箇所すべてに、今後3年間以上掲載しつづけること。
(3)(1)と同様の告知と謝罪を、新聞(朝日・産経・日経・毎日・読売いずれかの全国版)若しくは依頼者の同意する他の刊行物に、広告として掲載すること。
(4)過去の損害賠償として、当該書籍の発行部数に金150円を掛けた金額(印税率を10%として算出。ただし全体に対する該当ページ数で按分する)に、送信可能化権、口述権及び著作者人格権侵害分として金10万円を加えた額を支払うこと。

 本書はすでに2度目の警告であり、最終的なものです。仮に、7月25日中に文書により上記対応をおこなう旨の明瞭な返答を頂けない場合は、貴職に対して厳正なる法的措置をはかることとし、かつ、ただちに本警告書の内容を広く公表することで良識の府の一員たる貴職の社会的責任を世に問うとともに、依頼者の名誉回復をはかることといたしますので、左様ご承知おきください。なお、上記金額のうち、送信可能化権、口述権及び著作者人格権侵害分は依頼者の抗議が金銭目的ではないことを示すためにあえて最低限の額としたものであり、法的措置に至る場合には適正な精神的損害を含む全損害額を請求することになります。

 本件に関する今後の連絡は当職まで頂きますよう、お願いいたします。

敬具

添付書類1:寮美千子編・訳 篠崎正喜画「父は空 母は大地 インディアンからの手紙」
同2:岩井 國臣著「劇場国家にっぽん わが国の姿のあるべきようは」第30及び31頁


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