奈良少年刑務所の受刑者向けの授業「物語の教室」を受け持って5年目。今年初めて、塀の中の成人式に招かれた。
明治の名煉瓦建築である刑務所の講堂は、古めかしく威厳に満ちている。正面の舞台には、厚紙を切り抜いてつくった白い鳩。翼を広げ、いままさに飛びたとうとしている。みな、刑務所の教官たちの手作りだ。
手許には、画用紙に印刷されたプログラム。広げると、ここにも鳩が、ぴょこんと顔を出す。これも教官たちの手作り。込められた思いの深さが、胸にしみた。
講堂の後ろは家族席。刑務所で成人式を迎えることになったわが子や兄弟を見守ろうと、みな、緊張した面持ちで座っている。
やがて、新成人13名の入場。紺のブレザーにグレーのズボン。えんじ色のネクタイを締めている。足並み揃えて入場するその姿に、早くも涙するご家族の姿がある。
所長は祝辞で、130年間作り続けているサグラダ・ファミリア教会で働く日本人の言葉を紹介した。「生きている間に完成しなくても、いま作り続けることに意味がある」と、少年たちに勇気を与えてくれる言葉だった。
新成人たちは一人一人、自分で作文した「二十歳の決意」をみんなの前で朗読。驚いたことに、生ピアノの伴奏つきだ。この日のために音楽療法士の先生が、彼ら一人一人の「好きな曲」をアレンジし、弾いてくださっていたのだ。こんなにも大切にされる新成人が、ほかにどこにいるだろう。
自らの罪を深く悔い、こみあげる涙をこらえながら、明日への決意を述べる少年たち。重い罪を背負いながら、これからどう償うか、どう生きるかを真剣に思い悩む姿が、そこにはあった。こちらも涙が止まらない。
こんなに愛に満ち、思いやりに満ち、厳粛な雰囲気に満ちた成人式を、わたしはほかに知らない。それはまさに「責任ある大人への一歩」を踏みだすための神聖な儀式だった。
形だけの成人式、暴れる新成人もいるが、ここにはほんとうの成人式があると思った。
(作家・詩人)
成人式の式次第のプログラムを広げると、まっ白な鳩が飛びだした
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